「リクエストにお答えして、今日は『MR.BIG』」


「ちゃんと聞いてきたぞ」


「あぁ、聞いてきたの?」


「聞いて来ないと、お前がうるさいじゃないか。趣味じゃない音楽だって、一生懸命聞いてから来てるんだぞ」


「今回は、別に聞いて来なくても良かったんだけどね」


「なんで」


「いや・・・・」


「目を逸らすな。コッチヲ見ロォォォォ」


「ティーン用の音楽だしねぇ・・・」


「あたしたちは現役のティーンじゃないか」


「年齢はそうだけど、中身違うしねぇ」


「お前はまったく『MR.BIG』を評価してないのか」


「評価云々の前に、嫌いなんだよね。何よりギターのポール・ギルバードが
大っ嫌いだし、さらにヴォーカルのエリック・マーティンが超嫌いだし、ついで
にベースのビリー・シーンもやや嫌い」


「ドラムだけが残ったな」


「パットはやや良い。ソロはクソだけど」


「なんでそんなに嫌いなんだ?」


「プレイ云々より、あの日本に媚びきった態度に虫唾が走る。特にポール。お前、キンキキッズの後ろでなにしてんだよ。そんだけ日和っといて『レーサーX、オリジナルメンバーで再結成!』とかさ、『あぁ、お金欲しいんだな』ってしか思えないじゃん。今さらツインリードの速弾きなんかに興味ねぇって。喜んだのはギターキッズだけだろ?」


「いや、そんなことないんじゃないかな・・・」


「『うまい』ことと『かっこいい』ことは、直結しない。ポールもビリーも、うまいだけ。出してる音自体はつまんないよ。特にビリーのベースソロ。何回同じフレーズ弾いてんの?」


「確かに、LIVE盤のベースソロは飛ばすなぁ」


「エリック・マーティンなんてLIVEで『アァー!』って、それだけかよ」


「文句ばっかり出るなぁ。リッチー・コッツェン加入後はどう?」


「まったく興味ないし、タダでもいらない。文字通り、眼中にないって感じ」


「酷い扱いだな」


「そういうバンドだもん。でもまぁ、評価できるところもある」


「うんうん」


「1stはいいね。たまに聞くよ、年2回ぐらい。2ndは『alive and kickin'』
『voodoo kiss』『a little too loose』『road to ruin』を聞くね、年2回ぐらい。
3rdは全体的にいいけど、聞くのは年2回ぐらいかな。4thはどっか行っちゃった。LIVE盤はごく稀に聞くね」


「どっか行っちゃったってのは・・・?」


「いや文字通り、どっか行った。出てこなくてもいいから捜してないし」


「なんでそんなに嫌うんだ? 確か、昔は好きだったよな」


「うん、昔は好きだった。1stを初めて聞いたときは、『すげぇ! これがロックか! ヘヴィメタルというヤツか!』って思ったよ。一生懸命コピーもしたよ。『MR.BIG』
のおかげで、もた子の楽器の腕前はだいぶ向上したと思う。でもね、やっぱり
日本に媚び始めてからは『こいつらロックじゃねぇ』っていう思いがどうしても離れ
なくてね、彼らの音楽から自然に興味をなくしたよ。今でも興味はないし、彼らの音楽にはビタ一文払うつもりはない。タダでも聞かない」


「昔好きだっただけにってヤツか」


「うん。ポールがキンキキッズの後ろで何かしたって聞いたときは、本っ当に心底、ガッカリした。ポールが大好きだっただけに、本っ当にガッカリ。媚びるロックなんて存在しない。『ロックじゃない』なら、聞く理由もないよ」


「厳しいなぁ」


「そうは言っても、ティーンの子たちが『MR.BIG好き』って言ってるのが聞こえると、なんか微笑ましいというか誇らしいというか、『正しいぞきみたちぃ!』とかなっちゃうんだよね。『ぼくもまた、ポール好きが高じてアイバニーズのギターを買ったものさ!』と語りたくなるというか」


「だれだよお前。キャラはキャラとして、ちゃんと書き分けろ」


「ちょ、ちょっと神様が入ってきた」


「聞かなくなったけど、バンドに対する愛はほんのちょっぴりでも残ってるんだな」


「うん。でも、『to be with you 最高』とか言われると机をひっくり返すんだけどね。『あんなもん捨て曲じゃー!』って」


「よくわからん・・・各メンバーのソロはどう?」


「エリックはクソ。パットはつまんない。ナイアシン聞いてない。ポールは・・・最初のだけは評価する」


「ポールのソロなら、2ndじゃない?」


「なんで?」


「なんでって・・・・評判良かったし」


「ギターキッズにはね。ギターキッズの評価は聞くだけ無駄だから、聞かなくていいよ。あいつらはギターが鳴ってればなんでも名盤なんだから。もた子は2nd聞いてから、『3rd以降は買わないようにしよう』って思ったもん」


「じゃ、1stはどのへんがいい?」


「やっぱり、『Enuff Z'Nuff』からの影響が色濃く出てるとこだね。
『girls who can read your mind』とか『girlfriend's birthday』なんて、まんまズナフでしょ。『ドニーを殺して、もた子も死ぬ!』ってぐらいズナフが好きなもた子としては、ズナフへのリスペクトが溢れるぐらいあらわれてるソロ1stこそが名盤。
『bumblebee』とか『double trouble』とかもイイ!(・∀・)よね、ロックだね」


「ふーん、なるほど」


「まぁ、結局は好き好きなんだけどさ。最終的には自分で判断だよね」


「そりゃそうだけど」


「ところでさぁ、こうやって『MR.BIG』について語ってきたけど」


「うん」


「普段はさ、ここでバンドについて語るときは、そのバンドの音を聞きながらやるじゃない」


「そうだな」


「今回は聞きながらじゃないんだよね」


「そう言えば、かかってないな」


「うん。いまかかってるのは、『REGURGITATE』。ごあぐら? ゴアグラって言うの? よく知らんけど」


「いまかかってるこれ、音楽だったのか。『MR.BIG』聞こうよ」


「イヤだ。1秒でも聞きたくない」


「すごい嫌い方だな・・・」


「もうね、『MR.BIG』は思い出の中のバンドでいい。『あぁ、聞いたなぁ』とかね、そんなもんでいいの。ポールも抜けて、ビリーも抜けて、今はどうなってんの?」


「えっと、今は・・・」


「いい、いい。聞きたくない。あのさ、CDのことをアルバムって言うでしょ」


「なんだ、急に」


「いいの。言うでしょ、アルバム」


「うん、言うよ」


「もた子にとってはね、CDは本当に、あの写真入れるのと同じ意味のアルバムなんだよ。もた子は、自分の昔の写真、ぜんぜん持ってない。写真撮られるの嫌いだから、持ってない。だから、昔を振り返ることができないのね。『こんな時期もあったなぁ』って思う材料がないの」


「うん」


「だからね、『MR.BIG』のアルバムはその写真みたいなものなんだよ。たまーに
ヒョコッと出てきて、『あ、これを聞いてた時期もあったなぁ』ってしみじみ振り返る
と言うか。だから、なくしても捜さないけど、売ったりあげたりはできない」


「なんかいい話だね、それ」


「いい話でしょ。だからね、嫌いながらも忘れられないバンドなんだよ、『MR.BIG』は」


「そうかそうか。じゃ、かけようか」


「やーめーれー」


「あはは、素直じゃないなぁ。ほら、かけたぞ」


「ぎゃー! ロックじゃない! ロックじゃないよぉ!」


「悲鳴あげるほど嬉しいのか」


「(ぶくぶく)」


「あら、あ、泡吹いてる」


「・・・・・」


「えーと、ど、どうしよう」


「・・・・・」


「せ、せーぶいんぽっしっぼーでーいず」