「今日は、筋少こと『筋肉少女帯』」


「珍しい。日本のバンド出すなんて」


「まぁアレだね、こう言っちゃなんだけど、白人がやってる『だけ』のカスみたいなクソバンドに金払うぐらいなら、筋少全部聞きなさいと。オーケンを崇めなさい、と」


「だって筋肉少女帯ってアレだろ、『日本印度化計画』とか『高木ブー伝説』とか、なんかコミックバンドじゃないか。ロックっていうのはもっとこう深刻な心の叫びとか呻きとかそういうものを音に変換して・・・」


「知った風な口きくなよ、英語かぶれ。照射すんぞ、照射照射!」


「ま、まぶしいぃー!」


「歌詞が英語だとか日本語だとかで音楽の良い悪いを決めてるようなヤツは、浜崎(B'zでもいい)のかわりに白人音楽聞いてるだけなんだから、とっとと卒業しちまいな。金かかって大変だろ、CD買うんだってさ」


「お前はまたそんなこと言って、サーチライトのつもりか!」


「照射照射照射照射照射ァ! いやあのね、そりゃ確かに真乃緒ちゃんの言うように、ウケを狙った曲があることは確かだよ。そういう曲を最初に聞いちゃうと(またそういう曲ってば目立つんだよね)やっぱり第一印象はコミックバンドだよね。でもね、本当はそうじゃないんだよ。悲しくて切なくて弱くてどうしょうもない、うぐーって胸の底に沈められちゃうような、肌を刻まれるように痛くて辛い、儚い歌詞こそが『筋肉少女帯』の魅力・・・の一部なんだよ」


「うっそだぁ」


「ウソじゃねぇだよ。オーケンの歌詞は切ないよ、切なすぎるんだよ。十代のころの湿っぽくてねばっこい感情、徹底した自己批判精神、出口もなく深すぎる業にまみれた愛、これこそが、ロッカーが歌わなきゃいけないテーマじゃないんか! えぇ、どうなんですか」


「どうなんですかって言われてもなぁ・・・」


「外人さんの英語の歌詞じゃ、どんなに良い詩だって100%は伝わらないでしょ。そりゃ翻訳されてればなに歌ってるかはわかるけどさ、それがビビビッと心にヒットするってのはあんまりないと思うんだよねぇ」


「それは同意できるかな。英語で聞いて、あとで歌詞カードの翻訳読んでも直感的じゃないもんな」


「んだ。で、翻訳読み返してガックリ来ちゃうような歌詞とかもあるわけじゃん」


「あるある。肥溜めに落ちて大変だ、臭くて死んじゃうって歌詞はどうしようかと思ったぞ」


「いや、『SKINLESS』に関してはいいじゃないか」


「あぁ、お前はアレいいんだ」


「いいんだよ、うっさいな。だから筋少聞けってんだよ。ハイレベルな演奏の中でゴネゴネと蠢く情念、聞き手を容赦なく切り刻む言霊が筋少なんだよ。油断してると持ってかれる、アッチに持ってかれちゃうよ」


「やだ、そんな音楽。こわいよ」


「これだけ言ってもわかってもらえない無念極まるもた子のため、もっと電車よ真面目に走れ。オーケンの書いた小説、『くるぐる使い』の『きらきらと輝くもの』を読んで『くるくる少女』聞いたら、もた子は号泣したよ。そうだよ、夢でも嘘でも恋してたんだよ。それでもお前は彼女をキチガイって言うのか、言うのか!」


「なんだよもう。知らないよそんなの」


「莱穂も恋してたんですよー」


「うるせぇキチガイ! 消えろ! UFO乗って病院帰れ!」


「言ってること違うじゃないか」


「言う人間が問題なんだよやっぱり。あとはほら、『蜘蛛の糸 第二章』とかね。あんな詩ないよ、あんな辛い詩ないよ」


「感動的な詩なんだなぁ」


「いや、ストーカーの歌なんだけどさ」


「なんだよそれ」


「『蜘蛛の糸昇るため あなたをいま この世から消そう』。辛い、辛すぎる。『ダイジョブ、ダイジョブ』って歌ってるんだけど、もう全部が大丈夫じゃない。全部が。取り返しのつかない加減が聞いてて辛くて辛くて、胸がぐぅーって、ぐぅーってなるんだ」


「はぁ」


「オーケンは正しい詩人だと思うよ。良い音楽をやってるバンドはいっぱいあるんだけど、良い詩を歌うバンドってあんまりない。そりゃどのバンドもさがせば1、2曲は良い歌詞あるんだろうけど、オーケンは特別だよ。現実と非現実のあいだをフラフラと傷つきながら彷徨う、あの不安定感がすごく人間っぽくて共感できるんだなぁ」


「共感できるっていうのは、大事なことだな」


「例えば『BUMP OF CHICKEN』とかも詩で人の共感を得られたから人気が出たんだと思うんだけど、詩の秀逸さではやはりオーケンのほうが上。ただ、オーケンの詩は現実的だったり悲惨だったりするから、普通に夢見たい、現実逃避したい人たちには嫌われると思うけど」


「おまえ、『BUMP OF CHICKEN』聞くの? おまえの大嫌いなタイプのバンドだと思ったよ」


「『BUMP』は、『the living dead』なんか音楽的にも詩的にも良いデキだと思う。ま、それはいずれ語る」


「どんどん『metal』から外れていくんだな」


「なにをもってmetalかは、もう言い飽きたから言わないね、人によって違うんだし
さ。 とにかく、元祖電波系、大槻ケンヂ率いる筋肉少女帯を聞かずに、何を聞い
てROCKを語ろうと言うのか」


「電波系とROCKは関係ないだろう・・・」


「なくない! ロッカーとドラッグ、アルコールが密接に結びついてるのは、結局『あっち側』に対する憧れがあるからじゃん。それを擬似的にでも得ようとするから、ドラッグやアルコールに手が伸びるわけで。そう考えると、『あっち側』の人たちは脳内麻薬だけで色々見たり考えたりしちゃうから、すげぇなぁロックだなぁ」


「どこがロックだよ。ただの危ない人だろ」


「それを言ったら、歴史上の偉人だってただの危ない人いっぱいいるじゃん。どういう人間かなんか関係ないよ、なにをしたかでしょ。キチガイってのは、ある種のものすごい(ネガティブな)エネルギーの塊なわけよ。それをうまーく変換すると有名人になれて、うまくできないと犯罪者になるわけさ」


「うーん・・・で、オーケンはその、キチガイだからすごいのか?」


「違うよ。オーケンはキチガイじゃなくて、キチガイに憧れてる人、魅せられてる人。オーケンは永遠のネクラオタク少年だもん。ドラッグ経験だってないし(ウバタマ食ってゲロったらしいけど)、変な妄想も危ないとこまでいってないだろうし。でも、そこがオーケンの魅力なんだよねぇ。天性のキチガイじゃなくてもあれだけのものが作れるっていう意味で、すごく夢のある男だと思う。普通の人とキチガイの境界線をフラフラしながら言葉を紡ぐんだよ、これこそ詩人じゃん。オーケンは作家業もやってるけど、才能の帰結だね、当たり前すぎる帰結だね」


「ベタ褒めなんだなぁ。そんなにいい詩なんだったら、色々聞いてみたいなぁ」


「詩的な部分のスゴさは言わずもがな、音楽的にも筋肉少女帯はすごいんだぞ。白人カブレのギターキッズじゃ逆立ちどころか内臓ひっくり返したって弾けないようなプレイいっぱいあるんだぞ」


「わかったわかった。じゃ、お勧めのアルバムを教えてよ」


「アルバムは全部聞いたほうがいいと思うよ。面倒くさくて言うんじゃなくてさ」


「全部ったってお前・・・。なにかあるだろう、なにか」


「とりあえず、もた子の好きな曲はね、『サンフランシスコ』『タチムカウ -狂い咲く人間の証明-』『221B戦記』『サーチライト』『僕の歌を総て君にやる』『大釈迦』『蜘蛛の糸』『蜘蛛の糸 第二章』『これでいいのだ』『再殺部隊』『キノコパワー』『23の瞳』『踊るダメ人間』『最後の遠足』『スラッシュ禅問答』『元祖高木ブー伝説』『くるくる少女』『君よ! 俺で変われ!』『パレードの日、影男を密かに消せ』・・・あぁー、キリねぇー、書くの面倒くせぇー」


「それが入ってるアルバムがお勧めってことで、いいのかな」


「だから、全部買えよ! 全部お勧めなんだよ!」


「その中で、特にお勧めってないの?」


「『再殺部隊』」


「それが入ってるアルバムね」


「うー・・・アルバム買うんなら、『SISTER STRAWBERRY』・・・かな。でも、全部お勧めなんだよ、本当に」


「この、いまかかってるこの曲はなんて曲?」


「『僕の歌を総て君にやる』」


「いい曲だなぁ」


「ジョン・サイクスの『please don't leave me』みたいにキラキラしたキレイな曲なんだけど、やっぱり詩が切なすぎるんだ、これ。オーケンの歌い方もなにかすごく必死で、聞いてて胸がつまる」


「こういう側面が、筋少の本当の顔なんだな」


「うー、そうでもない。変な詩の変な曲もあるし。でもまぁ、つまんないコミックバンドじゃないんだよ」


「わかった。でも、第一印象がなぁ・・・」


「そんなものは、いくらでも覆して聞くの! もた子だって初めて『モーレツア太郎』聞いたときは『なんじゃ?』って思ったから、気持ちはわかるけどさ。ここはもた子を信じて、黙って金出してみなってばさ。ほら、サイフよこせよ」


「あ、人の財布を勝手に取るな!」


「どれどれ、いくら入って・・・うわぁ、ゴムが出てきた、ストップ・エイズー!」


「出てきてないよ! 返せ!」


「ぼへぇ、200円ぐらいしか入ってないよ。なぁ、いいんか、17歳にもなって、それでいいんか?」


「今日はちょっと、雑誌買っちゃったから・・・いいだろ、関係ないだろお前には!」


「雑誌、なに買ったの? なに買ったの? 『薔薇族』? それとも『G-men』?」


「なんでホモ雑誌なんだよ!」


「もた子が読みたい」


「自分で買えよ、本屋行って」


「それは・・・恥ずかちい、えへへ」


「いまさら照れるな!(びし)」


「雑誌、なに買ったんだよぉ」


「『ぼくドラえもん』の2号」


「・・・・・・・・・・・・・なるほど」


「1号のときは買い逃したからな」


「・・・・・・・・・・・・・そっか」


「なんだよ! 言いたいことあるなら言えよ!」


「言いたいことなんて別になにも、そんな、ジャイアンには関係ないよ」


「だれがジャイアンだよ!」


「リサイタルだってぇ!?」


「やらないよ!」


「でも、キャラ的に真乃緒ちゃんはジャイアンだと思う」


「そりゃあたしだって、自分がしずかちゃんだと主張するほどずうずうしくない。お前はスネ夫だな、スネ夫」


「違うよ。もた子はね、クリスチーネ剛田」


「クリスチーネって、ジャイ子だろ。なんで?」


「知らないんかぁ? ジャイ子の本名ってもた子っていうんだぜぇ、そんなことも知らないでドラえもんファンかよぉ」


「あぁ、それはウソだよ。ドラえもんの初期に『ぼた子』っていう女の子が出てて、それがジャイ子と勘違いされたうえに名前が変化して『もた子』になったんだよ。ジャイ子の本名は決まってないよ、決める前にF先生が鬼籍に入られたから」


「あぁ、そう」


「そう」


「じゃ、このへんで無駄話切り上げて、metalおしまい。ぼた子でした」


「もた子だろ!」