「リクエストが詰まってるとこ申し訳ない、今回はへぶげこと『HEAVENS GATE』
だ!」


「お、積極的なのはいいことだぞ」


「んもう、なんだお前ら! 今日のもた子ちゃんは怒ってるのだ! 先に神龍呼ばれちゃったフリーザの比じゃないぐらい怒ってるんだ!」


「なんで怒ってるんだよ」


「お前らは、お前らみたいなやつらは全員メタルやめて演歌聞けボゲッ! コブシきかせてりゃいいんだよ、日本の心を感じてりゃいいんだよ!」


「な、なんだよ、どういう怒り方だよ!」


「うぃー・おーん・じー・えーっじ♪ 久しぶりにさ、へぶげの『planet.e』を聞き返したのさ」


「うん」


「『うわー、相変わらずいいな、名盤だな!』と思って、ふと、このアルバムが評価低いこと思い出してさ」


「低いんだ」


「そうそう、っていうのもね、この前々作の『livin'in hysteria』が名盤でね。いや、
名盤『らしい』んですけどね?」


「持ってないの?」


「持ってるよ」


「じゃ、なんで『らしい』なの?」


「だって、『livin』が名盤なら、『planet』は超名盤だからさ」


「でも、評価低いんだろ?」


「そこが! 解せんと言うとるんじゃぁ!」


「いやそんなの、お前の好みだろだって・・・」


「違ーう! 断じて違う! 『planet』は捨て曲ないよ!」


「『livin』は捨て曲あるの?」


「ない・・・かもしれない。個人的に6曲目がいらないけど、あくまで個人的に
だから」


「じゃ、『livin』も名盤だろ」


「はいはい、名盤だね、そうなんだろうね。でもつまんないんだよ。つまんないだよ」


「また、そんな、お前・・・」


「いや正直な話、『livin』は聞いてると飽きる! だいたい最後の曲の『gate of heaven』ってなんだよあれ。演歌じゃん。あぁいうのがいいなら演歌聞けよ。演歌聞ーけーよ! 演歌聞けよ」


「3回も言わなくても」


「『へーぶんげいっ!』演歌じゃん」


「わかったから」


「ヘブゲを紹介してて『おすすめはこれ!』みたいに『livin』が出てるの見ると、
『はぁ?』ってね、『他のアルバム聞いて言ってる?』ってね。ヘブゲったら『livin』
だなんて、お母さん許しませんよそんなの」


「でもさ、ジャーマンメタル的な見地から言えば、ヘブゲと言えば『livin』じゃない
の?」


「んなこと言ってっから、他のメタラーから『ジャーマンは2流』とか言われるんだよ。『livin』はいいよ、確かにいいよ、かっこいいよ! 初心者にすすめるなら『livin』だねこれもうホント! でも浅いんだよ! 深みがないんだよ!」


「深みねぇ・・・」


「その点、『planet』はいいねー、いい子だねー。お母さん、『planet』大好き!
『livin』はもらいっ子だから、土間で這いつくばって皿に頭突っ込んで残飯食って
りゃいいのよ」


「どういう扱いだよ! 童話の悪役みたいだなお前」


「『planet』の前作の『hell for sell』も評判悪かったけどさ、もた子は敢えて、評判ほどレベル低いアルバムじゃなかったと言わせてもらうよ」


「えー、『hell』は評判通りじゃないかなぁ。明らかな捨て曲あるし・・・」


「そういうデカ女は、一生『rising sun』だけ聞いてろ」


「なっ・・・」


「あぁかっこいいなぁ、『america』『atomic』『up'an down』『white girl』『always look on the bright side of life』、かっこいいなぁいい曲だなぁ」


「そのへんに捨て曲が入ってるんじゃないかなぁ」


「もた子からしたら、『rising sun』が捨て曲。アルバムが濁るからなくていいよ。アニソンみてぇだし」


「そっ、それが目玉商品じゃないか! この曲は日本のファンのために作られた曲なんだぞ!」


「は、日本に媚びてる暇あったら、もっとロック頑張ってアメリカ目指せ」


「アメリカなんて、それこそ商業主義の国じゃないか」


「だからなに? そう思って日本に媚びて、へぶげの連中に何かいいことあった
かよ。4年ぶりの復帰作である『planet』が『livin』みたいなアルバムじゃないか
らって、そっぽ向いたのも日本のファンじゃないのかよ。どうせ媚びるならマーケッ
トが広いとこに媚びたほうがいいだろ。ヘブゲの不幸は『livin』を作ってそれがカラーになったこと、そしてそれが日本で受けすぎたことだよ」


「アルバムの内容が良くなかったら、酷評されるのもやむなしじゃないかなぁ」


「ヒドいアルバムなら酷評されんのは当たり前だね。でも、『planet』は決して駄盤じゃないもん。むしろ名盤。へぶげが出したアルバムの中で、一番面白くて一番かっこいい」


「うーん、そうなのか」


「『livin』になくて『planet』にあるもの、それはロックンロールだよ! ロックを感じるんだよ、『planet』からは! 『livin』聞いても『あ、ジャーマンですね』ってしか思わないけど、『planet』にはそれ以上がある! ただの平凡なギターピコピコ系ジャーマンとは一線を画す表現があるの! 『planet』は確かにジャーマンで、それと同時にロックでもあるんだ」


「ロックねぇ」


「ギターはあくまで前に出すぎず世界観を演出して、リズムは重く多彩に。また
フロントマンもいい仕事してるね。もともとハイトーン系だったけど、その音域に縛られずに力強い歌声が強烈に印象深いよ。曲もバラエティ豊かで深みがあるし、それでいてお約束はちゃんと踏んでる。これだけいいアルバムなのに、なんでみんな『livin』なんて押すの? もた子にはそれがわからん」


「いやほら、みんながお前と同じ感性ってわけじゃないし・・・」


「ほんと? みんなほんとに『planet』より『livin』のほうがいいと思ってるの? もた子には信じられないよ、どう考えても『planet』のほうが名盤だよ。ねぇ、みんな本当は『livinもいいけど、やっぱりplanetのほうが完成度高いかんな。でも、初心者におすすめするならlivinだから、とりあえずそう言っとくか』って思ってるんでしょ?」


「いや、そんなことはない・・・と思うけど」


「だって信じられない。本当に信じられない」


「でも、お前もそういうふうに感じるんなら、なにもジャーマン聞かなくてもいいんじゃないの?」


「む?」


「だからさ、ジャーマンのファンって、ジャーマンメタルにジャーマンらしさを求めて
るんだろ? でも、お前は違うよな。だったら、わざわざジャーマン聞かなくてもい
いんじゃないかな。ジャーマンファンからしたら、お前こそ『だったらジャーマン聞くなよ』ってことになるんじゃない?」


「ジャーマンらしさってなにさ」


「え? えぇと、ジャーマンらしさか」


「そのジャーマンらしさってやつを教えてよ。もた子はもた子なりに、ジャーマンメタルに対して愛を持って接してるわけさ。ハロウィンのジェリコ聞いて以来、もた子はジャーマンに痺れてるんだよ」


「えぇと、だから、それはだな・・・」


「ピコピコピコピコとギター弾いて、1パターンの曲を1パターンの音でやって、いつからそれがジャーマンらしさになったのか、もた子にそれを説明してよ」


「え、えっと・・・」


「『ジャーマン=メロディアス』じゃねぇんだよ!(どん!)」


「は、はいっ!」


「ジャーマンメタルの方向性を示したのがハロウィンの守護神伝だよ。守護神伝は確かにメロディアスだったね、でもそれだけか? それだけだったか? リフの構成に、リズムパターンに、曲調に、色んなところにアメリカやイギリスと違うドイツらしさがあったんじゃないの? 曲の薄っぺらいとこだけ聞いてピコピコギター弾いて、それでジャーマンらしい? フ・ザ・ケ・ル・ナ! それこそジャーマンメタルに対する冒涜だよ。『ジャーマンは2流』って他のメタラーに言われたら、もた子だって悔しいんだよ! いいや、もた子が一番悔しいんだよ! 今のもた子の支えは、RAGEとSODOMだけだ! だれだ、だれがジャーマンメタルを殺した! ジャーマンメタルはなぜ死んだ!」


「坊やだからさ」


「うるせぇこの野郎、ジャーマンを堕落させたのはだれだ!」


「はいっ、多分、キャプテン和田だと思います!」


「あのやろぉーっ! お前の、お前の批評ほどアテになんねーものはねーっ!」


「おっしゃるとおりです! それは本当に! もう本当に! 多分、みんなそう思ってます!」


「もた子の考えるジャーマンらしさ! それは気骨だ! 自分たちがジャーマンであることに誇りを持ち、それでもメタルを産んだイギリス、アメリカに礼を持ち、力強さと幾分の泥臭さ、農耕民族特有のマイナー調な曲! それがジャーマンだろが、あぁっ、ジャーマンだろが!」


「はぁ、はぁ、なるほど」


「アニソンみてぇな曲を乱発してメタルだとかヌカすヒマあったら、お前らなりのロックンロールを見せろ! お前ら一流だろ! 一流のメタルを産める民族だろぉ!」


「おぉ・・・愛だ」


「そら北欧に食われますわ」


「うーん、そうだなぁ」


「絶望的に無理なことはわかってるけど、へぶげが再結成するんならもた子は応援するよ。『planet』みたいに、いや、『planet』以上にかっこいいアルバムを出せるなら、そりゃもう力の限り応援するよ。そのときは、間違っても『livin』みたいな『駄作』は作らないで欲しいな。あんなもん焼き直されたら『あぁ、お金ですか』ってなっちゃうかんね」


「はい、はい」


「あぁ、言いたいこと言ったらスッキリした! よっしゃ、ジャーマン復興を願って、今日はビールでもどうですか真乃緒さん」


「あれ、いける口になったのか?」


「なんだ、いける口ってやらしいなぁ」


「別にやらしくはない・・・」


「真乃緒ちゃん家で飲んだら、怒られないのねん」


「うーん、まぁいいか! 今日は6月末だというのに夏みたいに暑かったしな」


「そうそう、真乃緒ちゃんのブラウスが汗でピタピタになってやらしいから、今日はきっとビールがおいしいよ」


「うわぁ、いらんこと言うな!(ぼか)」


「いでぇ、酒乱だなお前!」


「まだ飲んでないよ!」


「こんなん落語にあったね」


「また落語かー」