「今日はリクエストにお答えして『DEATH』だよ、ぽえぽえ」


「あい」


「ホントはヴォーカリスト兼ギタリストである、鬼才・チャック・シュルディナーの
命日、12/13に書くべきなんだけどねぇ、ぽえぽえ。書いてるヤツがそういうの
に合わせるのが苦手なんでねぇ」


「言い訳はいいから、『DEATH』の話に入ろうよ」


「『DEATH』は、デスメタルの創始者とか言われてます。ホントかどうかは知らないけど」


「へぇ、そうなんだ」


「『DEATH』はね、もた子が知ってるなかで最もパーフェクトに近いバンドなんだよ。超人に例えたらネプチューンマンだよ。イチバーン!」


「パーフェクトねぇ」


「そうだよ。複雑怪奇にグナグナと螺旋を作る妖しくって耽美なメロディ、その
ネガティブ暗黒空間のド真ん中をストレートパンチぶち込むみたいに貫く圧倒的
リズム、点から線、線から面へと、パズルのピースをはめあわせるように一つの
立体音楽へと至る構成美、そう、『美』だよ、『美』! 餓狼伝で言うところの
『華』! それが『DEATH』の魅力だよ」


「餓狼伝に例えた時点で、なんかちょっと安っぽく感じちゃったけどな。『華』って言われても」


「なんだよぉ、グレート巽バカにすんなよぉ」


「わかったわかった」


「既存のデスメタルと『DEATH』を比べると、前者が補強に補強を重ねて作られた無骨な鈍器であるのに対して、後者の『DEATH』はすべてが計算されて作りこまれた日本刀だね。兵器に例えるなら、前者が圧倒的破壊力の主砲を持って負け犬を踏み潰す重戦車に対し、『DEATH』はピンポイントで各地を爆撃して去っていく爆撃戦闘機と言ってもいい」


「物騒な例えばっかりだな」


「む、わかった。『DEATH』は、メタル界のムンクなんだよ。作品から滲み出る息苦しささえ漂う暗さ、その中に極端に浮き上がらせた象徴美、斬新で高度な手法、技術、不吉に歪められた人間、表情、おぉ、いい加減に言ってるけどけっこう的を得てるぞ。もた子ちゃん感激」


「ムンクって言われても、あの裸電球みたいな人の顔しか思い浮かばん」


「バカッ! 時計仕掛けのバカ! 『ダーグニィ・ユール・プシビシェフスカ』
見てこい! そいで感動してこい!」


「そんな言いにくい絵の名前はおぼえられん」


「張り合いないなぁ。とにかく、『DEATH』はそういうバンドなの」


「じゃ、既存のデスメタルはどういう絵?」


「さぁ、知らね。プログレはダリだと思うけど」


「ダリって、あのグニャグニャしてる絵だな」


「そうそう。で、メロデスは同人誌。メロスピはエロ同人誌」


「ヒドい差だ・・・」


「いや、適切な比喩だ。もた子ちゃん感激」


「で、具体的にどういう音出してるの? 『DEATH』ってぐらいだから、まんまデスメタル?」


「んにゃー、そうじゃないのねん。音はどっちかって言うとスラッシュに近い。
歌ってるチャックの声も、デス声とは言えないと思うし。あと、ブラストビート
とかもないしね」


「ブラストないんだ。じゃ、遅い曲ばっかり?」


「ミドルテンポの曲が多いね。でも、無理して速い曲やらなくてもどの曲にもすごい技術と美しさが詰まってるし、これでいいと思う」


「ふーん。あたしは速い曲好きなんだけどなー」


「真乃緒ちゃんは、ブラガだけ聞いてればいいの。ブラガはブラガでいいバンドなんだから、ね?」


「なんかムカつく言い方だなぁ」


「『DEATH』は、ギターだけが目立って音を出してるバンドじゃないから、ちょっとわかりにくい部分があるんだよね。特にミドルテンポの曲が多いし。でも、ギター・ベース・ドラムのバンド・アンサンブルで絡み合う音をそのまま、かたまりで聞けるようになるとその魅力がズビバーッとわかると思う」


「なるほど、バンド・アンサンブルか」


「『ギターがいい』とかはさ、音楽を部分でしか聞いてないんだよ。さらに、演奏者の側でもそういう1ポイント的なやり方でしか魅力が出せてないわけ。そうじゃなくて、『バンド』っていう1個の生き物の、『DEATH』っていう1個の生き物の出すすべての音を、呼吸音から筋肉の蠢き、骨の軋み、そういうものを含めて全部を、聞いて欲しいなぁ」


「ふーん」


「それだけに、聞く側にもある程度の緊張感を強いちゃう部分があるから、アルバム1枚丸々聞きとおすとかなり疲れちゃうけどね。それと、1ポイントで良さを出す音を否定してるわけじゃないからね。もた子もそういうのは好きだよ。でも、『DEATH』の魅力は、そういう『部分の魅力』じゃないってことなのねん」


「全部がいいってことだな」


「それは言葉と知能が足りなすぎだけどね。ようするに、『DEATH』はポコポコとメンバー変えちゃうから『DEATH = チャック・シュルディナー』みたいに思ってる人も多いけど、そうじゃないよってこと。ちゃんとバンドしてるんだぞっと」


「へぇー、そんなにメンバー変えるんだ」


「うん。どこで掘り出してんだか知らないけど、毎回バカテク連中連れて音楽作ってんだよ。そういう意味でも、やっぱりチャックは凄い!」


「亡くなったのが惜しまれるな」


「そんな一言で片付けるな! メチャクチャ惜しいっつの! メタル界の巨人が逝ったんだよ。非常に残念な話だよ」


「そうか、それは悪かった」


「間違いなく、メタル界の歴史でも重要な存在だよ、チャックは。絶対テストに出るね」


「で、おすすめのアルバムとかは?」


「『individual thought patterns』一択。とにかく、最初にこれを聞くべき。で、聞いたら全部買う。これ」


「全部かぁ」


「初期のものはやっぱり荒削りだし、バンドとしても不安定だったから、後期のものから聞いて戻っていくのがいいよ」


「珍しいな、お前が後期から聞けって言うの」


「初期は初期で好きだけどね。とにかく、『individual thought patterns』のインパクトが強烈だった。初めて聞いたときは、もた子のメタル観を破壊されたね。それぐらいすごい。名盤とか、そんな言葉ではあらわせられない」


「そんなにすごいのか」


「まさに神の所業。メタラー必聴」


「あたしが聞いてもわかるかな?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7割無理」


「7割も無理なのかよ!」


「ある程度の経験値積んでからのほうがいいよ。初心者には初心者向けが一番いいんだから」


「そんなに『いい、いい』って言うから、聞きたくなったんだけどなぁ」


「じゃ、『DEATH』の魅力がわかるぐらい、色んなメタル聞こうね。1ジャンルだけ聞いてたって、耳は育たないよ。いま真乃緒ちゃんがメインで聞いてるのはなに?」


「ジャーマンメタル」


「じゃ、そこにスラッシュとフロリダ産デス、プログレも多少欲しいね。あと、『VENOM』含むブラックも少し必要かな。とにかく、色々聞かないと」


「くく、宿題が増えた」


「それぐらいする魅力があるバンドだよ、『DEATH』は」


「本当に、それぐらい聞かないとわかんないのか?」


「別に大丈夫だと思うけどさ。ただ、『individual』聞いてイマイチだったら、それは確実に聞き手が悪いせいだから。そう言い切っちゃえるほど、完成度の高いアルバムなの」


「悪い耳だって言われるのもシャクだし、とりあえず納得しておくよ」


「『いい、悪いは価値観の問題』とか、そういうゴタクの介入する余地のある
バンドじゃないからさ、『DEATH』は。わかんなかったら、それはセンスがな
いわけだから」


「そ、そか」


「しかし、本当に亡くなったのが悔やまれる。惜しい、あまりにも惜しいよ。チャック、生き返らないかなぁ」


「それは無理だなぁ」


「生き返って、メロデスが氾濫するいまのデス界に、帝王としての貫禄を見せてくれないかなぁ。デス界はいま、襟元を正すようなバンドを必要としてるよ」


「メロデスはメロデスでいいじゃないか」


「デス声とブラストがあればデスとか言っちゃって、おめでたい話だねホント。攻撃性もないのにデスですか。あぁそうですか」


「はいはい、悪口はやめろって」


「ヴァーチャルメタルネットアイドルもた子は、正統派デスを応援しています」


「『ちゆ12歳』かよ!」


「へへ、いっぺんやってみたかったんだ」