「(・∀・)つ∴タンソキーン」


「なに?」


「今日は『ANTHRAX』」


「うん」


「とりあえず、もた子は後期派」


「はぁ」


「厳密に初期と後期に分ける必要はないけど、もた子は後期派」


「それはわかったから、初期と後期でどう違うのか説明しろよ」


「だから厳密には分けられないって言ってんのに。まぁ例えるなら、初期は7.62ミリ機関銃、後期は105ミリ戦車砲」


「わかったようでよくわかんない説明だなぁ」


「初期は・・・あんまり持ってないから、スラッシュです多分としか言えないんだよ。後期に関しては色々言えるけど」


「じゃ、言える範囲でいいから説明してよ」


「もた子は『ANTHRAX』の何が好きかって、サウンドの背骨にすごくわかりやすくヘヴィロックがあるのが好きなのね」


「ヘヴィロックね。なんかそういうのの分け方がもうわからないんだけど」


「無理してわかろうとしなくていいよ、人によって違うし。んで、ヘヴィロックのルーツを匂わせながらもメタルとして1パターンに陥らず、わかりやすくて親しみやすいヴォーカルラインとリフ、あと厚いリズムを持って個性を出してるのが『ANTHRAX』の魅力じゃないかなぁと、もた子は思う」


「ふんふん」


「真面目に語るとこんな感じなんだけど」


「もう終わりか。で、お前は後期が好きなんだな?」


「うん。でも、初期が好きな人たちのほうが多いみたいだね」


「初期はどういう音なわけ? わかる範囲でいいから」


「あの、工事現場みたいな」


「もうわかった。なるほどね」


「結局『ANTHRAX』もスラッシュ四天王の一員なわけで、スラッシュやってたころが一番(・∀・)イイ!って意見が出るのは必然。それでも、もた子は後期のほうが好きだけど」


「でもお前にしちゃ珍しいな、普段は工事現場のほうが好きなのに」


「まるで土方だね、そう言うと。もた子は初期の『ANTHRAX』をなかなか見つけられなくてさ、新品で買うほどお金持ってないし、どうしても後期のものばかり拾っちゃうんだよ。だから、やっとこさ初期を見つけて聞いてもなーんかピンと来ないんだよね。もうイメージができあがっちゃっててさ」


「なるほど。一番最初に聞いたアルバムって大事だよな、そのバンドのイメージを作っちゃうから」


「うん。でも、価値観ってのはそうやって作られていくんだから、それでいいと思う。メタル初心者さんに多いのが、『どういうのを聞いたらいいですか?』って言ってる人たちね。そりゃCDいっぱい出てるからどういうの聞けばいいのか迷う気持ちはわかるけど、そこで簡単に人を頼ったりせずにジャケ買いしてみるとか、自分なりに色々足掻いて価値観作って欲しいなぁ。誰かの価値観コピーしたって最後にゃ飽きるんだし」


「人に聞くなってこと?」


「あ、いや、聞くのはいい。聞くのはいいんだけど、まぁ、なんだ、あんまりオールドメタラーの言いなりになるなってこと。『アレ聞かなきゃダメ、コレ聞かなきゃダメ』ってうるさいヤツがたまにいるけど、そういう先輩風吹かしたいだけのおバカさんには堂々と中指立てようね。きみの価値観はきみが作るのだ!」


「良いこと言ってるようだけど、先人の意見を聞くのも大事だぞ」


「だから、まったく聞くなって言ってるわけじゃないってば。バランスだよバランス。中には本当に好意からお勧めしてくれる人もいるからね、そういう人たちには感謝して、参考にさせてもらうといいよ」


「そうだな。でも、お前だってそういう押しつけがましいとこあるぞ」


「そんなのわかってるよ。だからいっつも、もた子の言うことなんて気にするなって言ってるじゃん」


「あぁ、そうだったのか。で、だいぶ話がずれたみたいだけど」


「ずれたと言うか、これで初期派の人たちも、もた子が後期好きな理由をわかってくれるかなって」


「なんだ、防波堤立てたかったのか」


「『後期好きです』って言うと、だいたい『なんで?』って聞かれちゃうからさ。『なんで?』って聞くなら、もた子に初期のアルバム全部よこせ! くれても聞かないけど」


「聞かないのかよ!」


「もらったCD、借りたCDは聞かないのだ」


「やっぱフトコロ痛めて買ったアルバムが・・・」


「そうそう。そういうことだね」


「で、お勧めとかはあるの?」


「ヴォーカル変わったあとのアルバム、全部」


「全部ってお前・・・」


「いや手抜きじゃなくてね、本当に全部なんだよ。どのアルバムもそれぞれ良さがあるから、まぁ全部だね」


「初期のお勧めは?」


「聞いてないからお勧めできないよ。敢えて言うなら、3rdの『amang the living』が名盤みたいだね」


「持ってないのか」


「持ってなーい」


「もっとCD買わなきゃダメじゃないか」


「欲しいんだけどね。お金がないね」


「じゃ、働け」


「アルバイトか。うーん、何かいい仕事ない?」


「お前の言ういい仕事がわからん。なにか希望はあるの?」


「ラクなの」


「働くという行為がもうラクじゃないんだ」


「書いてるヤツの職場はラクだよ」


「それはそれで色々悩みがあるんだ」


「真乃緒ちゃんは月にお小遣いいくらもらってるの?」


「20000円」


「も、もらいすぎだ!」


「小遣いは10000円だよ。そこに店の手伝いと家事全般のご褒美で、プラス10000円。それで計20000円だな」


「なるほど」


「お前は?」


「10000円」


「ずいぶんもらってるじゃないか」


「ホントは5000円なの。でも、毎月パパンが『5000エンジャナニモデキナイデショ
ウ』って自分のお小遣いから5000円くれる」


「いいパパだなぁ」


「そうでもないよ。靴とか隠すとすぐ泣くし」


「隠すなよ!」


「『会社行ケナイヨー』ってすぐ泣く」


「なんか可愛そうだなぁ」


「あと、『お前ん家、貧乏! やーい貧乏!』とか言うと泣く」


「だから泣かすなよ! だいたいお前ん家ってお前ん家だろ!」


「ママンも『やーい貧乏!』って」


「だから自分ん家だろ!」


「でも、そんな弱そうなフリして、お酒が入ると変わるからね」


「えっ! 何気に酒乱なのか」


「もう暴れて大変だよ。兄ちゃんが出てったのも、お酒が原因みたいなもんだから」


「あらー、それはなんだか深刻だなぁ」


「次の日とか、傷だらけでね」


「うーん、お前ん家のママはけっこう強い人なのに、それでも止められないのか」


「いや、暴れるのはママンだからね」


「そっちかよ!」


「有無を言わさずマウント取られるパパンを見て、兄ちゃんも『ボクもあぁなるのか』って」


「それで出てったのかよ! 弱すぎるよお前んとこの男勢は!」


「もた子も止めようと思って」


「そうだよ、止めてやれよ」


「こう、羽交い絞めにしてね。こらー!って」


「うんうん」


「そしたら必死でもがくんだよね、パパン」


「お父さん押さえてどうすんだよ!」


「いや、逃げようとするから」


「逃がしてやれよ!」


「『ボディーにしな!』」


「うるさいよ!」


「今じゃ会社の同僚も気を使って、パパンを飲みに誘わなくなったよ」


「そりゃ誘えないよ」


「でも、あれでうまく行ってるから不思議だよね。普段はイチャイチャイチャイチャしてるから」


「あぁ、お前んとこのご両親は本っ当にいつ見てもベタベタくっついてるからな」


「二人で一人だよ」


「そうだなぁ」


「手術で切り離されて二人になったんだけどね」


「やめろぉ! 危ないよそのボケ!」


「手術も無事に成功して、みんなから『トウチャン、カアチャン』って呼ばれて親しまれてるよ」


「そう呼んでるのはお前とお兄さんだけだ! もういいよ!」


「もういいね」