TSUYOSHIの読書日記
1997年10月4日
告白
井口俊英著
このタイトルを見て、どう思ったでしょうか?恋愛もの?
でも、著者名を見て、ピーンときた人も多くいるんじゃないでしょうか。
そうです、これは、1995年に米国債取引で10億ドルもの損失を出していたことを公表し、米市場から追放された大和銀行のニューヨーク支店にいた井口俊英氏が留置所内での手記をまとめたものです。
本書は、この事件の張本人が書いた手記であるため、偏りがないとは言えないかもしれないけれども、12年間にわたる不正取引をどのように行い、大和銀行と大蔵省がそれをどのように隠蔽しようとしたのか、ということが克明に描かれています。
本書を読むと、日本の銀行の海外展開が、いかに手薄で、横並びで、無知であったのかということを知ることができます。特に、マーケット・リスクをはじめ、あらゆるリスク管理が全く行われていなかったことが明らかになります。海外展開についての軽薄さを言い表した記述として、
1980年代、邦銀は急速な国際化を強いられ、米国の法律など考えず大蔵の保護のもと、手さぐりで新業務に邁進していった。
という箇所があります。この部分が、70年代、80年代に対米進出した日本企業の失敗の本質を語っていると思います。
アメリカン・ドリームをつかみかけた1人の人間が、成功から転落していく過程や、その心理を非常にリアルに表現していると思います。
また、本書の中で改めて知ったのは、たとえ井口という当時の日本人としては先端をいっていたトレーダーでさえも、自らがやっていたことは、投資でも投機でもなく、ギャンブルに過ぎなかったと述べていることには、ショックを受けた。いかにこの世界がシビアなものであるかということを、改めて知ったのでした。
いずれにしても、本書は1人の人間模様としても、日本のリスク管理の稚拙さを強烈に語っているものとしても、読むに値する書であると思う。
この方面に関心のある人には、強く推薦できる1冊でありました。
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